美と音楽の饗宴

会期:2021年10月25日~27日
会場:福音派ハウス・ボン Haus der Evangelischen Kirche Bonn(ドイツ・ボン)

音楽は絵画の妹と称すべし(レオナルド・ダ・ヴィンチ『手記』より)
古代ギリシャ時代、哲学者アリストテレスの分類に端を発する5感。なかでも視覚と聴覚は、創作活動をする上で欠かすことは出来ません。主に視覚は絵画や造形物、文学に通じ、聴覚は音楽に必要不可欠なものですが、芸術家たちはしばしばこの感覚を交差させ、研ぎ澄ますことによって常人の及ばない世界を表現してきました。音楽家は芸術作品からメロディーを想起し、芸術家は壮大な音楽を聞くことで主題に奥深さを得ます。こうした感覚の交流が、今日までの芸術を昇華させてきたと言えるでしょう。

楽聖ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは「音楽家=芸術家」と公言し、詩と音楽、絵画と音楽の結びつきや、視覚と聴覚の融合を深め、貴族のための余興でしかなかった音楽を大衆に広めました。晩年、聴力を失いますが、それでも彼が素晴らしい「交響曲第9番(通称:第9)」を作り上げることが出来たのは、ドイツの詩人フリードリヒ・フォン・シラーの原詩『歓喜に寄す』を始め、聴力を補うための感覚やインスピレーションによるものでした。「第9」は日本でも年の瀬を告げる風物詩として演奏されており、今なおベートーヴェンが生み出した芸術は老若男女を問わず世界に影響を与え続けています。

この度、彼の偉大な業績とともに日本人芸術家の創作を「第9」の楽譜の表紙にあつらえドイツの福音派ハウス・ボンで展示するとともに、全作品を網羅した1冊の美術作品集にまとめる運びとなりました。かのレオナルド・ダ・ヴィンチも密接な関係と説いた絵画と音楽が、ハーモニーを奏でる本書をどうぞご高覧ください。